2011年9月23日金曜日

よるはなす 3


僕?
僕はずっと夜道を歩いてる

ここはひどく暗いけど
ここはひどく暗いんだ
歩きながら眠り込みそうなほどね

僕の高校時代の友人に
開かずの弁当を持っている男がいたよ

学級机の奧の奧にそれはあって
半径五十センチ以内に近づくことは
教師でさえ許されなかった
三歳のときに母親からもらったそうだ

いつか彼が 司法試験に合格したとき
亡き母のためにそれを食べるんだと
修学旅行の夜にこっそり教えてくれた

彼は卒業の二ヶ月前に交通事故で死んだ
太った母親が通夜で大酒を呑んでいた
机から弁当箱は見つからなかった

嘘でしょうって そりゃ嘘さ
本当の彼はいまごろ
青年会議所で馬鹿笑いしてる
もちろん僕は彼と会ったこともない

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